毎月お届けしている「事務所別 公報ランキング」の集計作業の中で、2026年10月分は特許・実用新案・意匠・商標の4種別の中でひときわ対照的な動きが見られました。特許登録はここ1年で最も多い件数となった一方、意匠登録・商標登録はそろってここ1年で最も少ない件数となっていました。最初に書いておきますが特許と意匠登録・商標登録とは全く別の法域であり、審査する審査官はエキスパートであり、審査官の数が変化したわけでもないと思います。今回はこの「分かれ道」を、単に実際の集計データをもとに解説したいと思います。
直近12か月の広報件数推移(登録ベース)を再掲します。
特許登録:直近12ヶ月で最多の16,769件
2026年10月の特許登録公報(登録公報日ベース)は16,769件。これは2025年11月以降の直近12ヶ月の中で最も多い件数で、前月(2026年9月、14,012件)と比べても+19.7%の増加です。
事務所別ランキングでも勢いが見られ、首位の弁理士法人志賀国際特許事務所は2,368件→2,826件とさらに件数を伸ばし、3位だった中村合同特許法律事務所は901件→1,466件(+62.7%)と大きく件数を増やして2位に浮上しました。
出願人別に見ると:キヤノンが際立つ伸び
事務所(代理人)別だけでなく、出願人(企業)別に特許登録件数を9月・10月で比較したところ、全体の増加基調(+19.7%)を大きく上回る伸びを見せた企業がいくつかありました。特にキヤノン株式会社は215件→401件と+86.5%の増加で、件数・伸び率ともに際立っています。
このほか、日本製鉄株式会社(69件→121件、+75.4%)、住友電気工業株式会社(55件→95件、+72.7%)、TOPPANホールディングス株式会社(52件→84件、+61.5%)、NTT株式会社(54件→84件、+55.6%)、コニカミノルタ株式会社(53件→81件、+52.8%)も、全体平均を上回る伸びを見せています。なお、首位のトヨタ自動車株式会社は471件→534件(+13.4%)と、件数自体は最多ながら伸び率は全体平均並みでした。
意匠登録・商標登録:そろって直近12ヶ月で最少
対照的に、意匠登録は1,372件(前月2,429件、-43.5%)、商標登録は6,089件(前月9,751件、-37.6%)と、どちらも直近12ヶ月で最も少ない件数となりました。意匠登録は2番目に少ない2025年11月の1,799件を、商標登録は2番目に少ない2026年7月の7,602件を、それぞれ大きく下回っています。
事務所別ランキングでも、前月上位だった事務所の落ち込みが目立ちます。意匠ではTMI総合法律事務所(154件→41件)、弁理士法人創英(146件→49件)、弁理士法人オンダ国際特許事務所東京オフィス(142件→58件)が軒並み大幅に件数を減らしました。商標でも、首位のTMI総合法律事務所が679件→435件、弁理士法人Toreruが646件→294件と、ほぼ半減しています。
この変動をどう見る?!

特許庁が発行する「登録」ベースの公報件数は、出願人の活動量そのものよりも、特許庁側の審査・登録処理が月ごとにどの程度まとまって行われたかに左右される側面があります。特許は8月・9月が発行の数が減少したあとの増加、商標は8月・9月で増加してきた後の減少なので、単なる公報発行作業のゆれなのかもしれません。それがたまたま特許はここ1年で最大、商標はここ1年で最小になっただけかもしれません。
今回の特許の急増・意匠と商標の急減が、事務所名や出願人の名称をあげてはいますが、ただちに出願活動そのものの増減を意味するとは限りません。今後の推移を継続して観察していきたいと思います。一つだけ言えることは案件を受任していた事務所の特許が増加したところの事務の人は先月は庁受領報告に少し忙しくなり、意匠・商標の事務所の事務の人は庁受領報告が少し楽だったかもしれないということです。
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