【2026年】知財業界の転職市場はどうなっているのか調べてみた。弁理士・特許技術者・特許事務のこれまでとこれから

📅 2026年10月25日 キャリア
知財業界の転職市場(分かれ道のイラスト)

知財業界でのキャリアや転職を考えているみなさま、今の転職市場の動きを把握できていますでしょうか。私自身は転職するつもりはないのですが、20年及び10年くらい前に転職活動をした者として、現在の状況を調べてみようと思いました。以前の感覚は...

「昔はパテントサロンを眺めていれば、良い求人が見つかった」
「理系出身なら、未経験でも特許技術者として転職できる」

と言った認識でした。今の知財業界は、国内出願件数の減少やDX(デジタルトランスフォーメーション)、グローバル化の進展によって、求められるスキルや採用の傾向が大きく変わってきているのではないかと思います。

この記事では、知財業界の主な3職種(弁理士、特許技術者、特許事務)について、以前の自分の経験と、流れを振り返りながら、今求められているスキルとこれからのキャリアの考え方をまとめてみます。

数字で見る知財業界の今

まずは、特許出願ココで集計しているデータから、直近5年の動きを見てみます。

知財業界の直近5年(公開特許件数・弁理士数)

公開特許の件数は、2021年の約18.9万件から2024年には約16.5万件まで減りました。2025年はソフトバンクグループのAIを使った大量出願があったので約17.4万件と持ち直していますが、弁理士・技術者が携わった件数は減少していると思います。5年間で見ると約8%の減少で、出願が少しずつ減っている流れは数字にも表れています。

一方、特許事務所に所属する弁理士の数は、2022年から2026年まで約8,500〜8,700人の間でほとんど変わっていません。弁理士が足りなくなっているわけでも、余っているわけでもなく、限られた人数の中で「どんな強みを持つ人か」が問われる時代になっていると言えそうです。

※公開特許は出願から約1年半後に公開されるため、出願の動きを少し遅れて表しています。弁理士の数は、弁理士ナビに事務所の所属として登録されている人数(各年6月時点)で、企業の知財部に所属する弁理士は含まれていません。

1. 弁理士:明細書の大量生産から「プラスα」の時代へ

これまで(2000年代〜2010年代前半)

2000年代には弁理士試験の合格者数が大きく増えた時期がありました。当時は国内の特許出願件数も多く、特許事務所での評価は「どれだけ多くの明細書を効率よく書けるか」という実務処理能力に直結していました。資格さえあれば、転職活動で困ることはほとんどない「売り手市場」だったと思います。

今(2020年代〜)

国内出願の減少や、企業からのコスト削減の要請などを受けて、単に「日本語の明細書を書くだけ」の弁理士は、キャリアの二極化に直面していると思います。その一方で、次のような「プラスα」の強みを持つ弁理士は、今も多くの事務所や企業から求められているのではないでしょうか。

  • 国際対応力(高い英語力):海外への出願(PCT出願など)や、海外の現地代理人とのやり取りをこなせる人材は有利。
  • 企業知財部(インハウス)への転身:安定した環境や、企業の事業戦略に直接関わりたいという思いから、事務所から企業知財部へ移る弁理士も増えているように思います。
  • ビジネス・コンサルの視点:スタートアップの支援や、手続きの代行にとどまらない知財戦略のコンサルティングができる弁理士の価値が高まっていると思います。

2. 特許技術者:先端IT分野への集中と年齢の壁

これまで(2000年代〜2010年代前半)

以前は「理系のバックグラウンド(研究・開発職の経験)があれば、知財未経験でも歓迎」という特許事務所が数多くありました。事務所で実務を学びながら明細書作成のプロとなり、数年のうちに弁理士資格を取ってステップアップしていくのが王道のルートでした。弁理士資格を有しないからこそ明細書作成の技術を極めた方も弁理士同様転職ができる時代だったと思います。

今(2020年代〜)

特許事務所が教育に十分な時間を割きにくくなっていることもあり、実務未経験者の採用では「30代半ばまで」といった年齢の壁を以前より意識する事務所が増えていると思います。それでも、次のような技術分野の経験があれば、年齢に関わらず評価されやすい状況です。

  • IT・情報通信・AI分野:ソフトウェアやAI関連の出願が増えており、最新の技術や仕組みを理解できる技術者の需要は高いと思います。
  • バイオ・医薬・半導体分野:高い専門性が必要で、ほかの分野の人では代わりがききにくいため、研究開発職からのキャリアチェンジ先として今も人気がある気がします。

また、弁理士試験の受験者の統計を見ると、長くキャリアを安定させるために、働きながら弁理士資格の取得を目指す特許技術者は15年くらい前からは半減しましたが、数年は安定しています。

3. 特許事務:システム化による効率化と英語力の差

これまで(2000年代〜2010年代前半)

特許事務(国内事務・外国事務)は、一般的な事務職とは違い、特許庁への特殊な手続きや厳格な期限管理といった専門知識が必要です。そのため「一度経験すれば全国どこでも働ける、手に職がつく安定した仕事」として人気がありました。

今(2020年代〜)

特許庁の手続きの電子化や、知財管理システムの導入(DX化)が進んだことで、単純な入力作業が中心の「国内事務」の求人は、以前より少なくなっていると言われます。今、特に求められているのは次のようなスキルです。

  • 外国事務(内外・外内)の経験と語学力:日本企業の海外出願や、外国企業からの日本への出願を支える仕事です。海外の現地代理人と英語でメールのやり取り(コレポン)ができる人材は不足しがちで、経験者は高く評価されます。
  • 知財管理システムの移行・運用のスキル:事務所のペーパーレス化や、新しい管理システムへの移行を進められるITに強い事務員は、組織の要として重宝されます。

実はガラリと変わっていた「知財のエージェント事情」

ここまで各職種の「今」を見てきましたが、実は求人を探す環境(転職エージェント)もここ数年で大きく様変わりしています。実は私自身、約10年前に弁理士試験を断念した際、当時知財・技術系に強かった「アスタミューゼ」という転職エージェントを使って、事務員兼システム開発として転職をしました。しかし今回、現在の市場を改めて調べてみて驚きました。アスタミューゼの人材紹介(転職エージェント)事業は、2022年12月に他社へ事業譲渡されていたのです。当時、知財業界でお馴染みだったアスタミューゼの転職サイトは、現在は以下のように引き継がれているようです。

  • 「知財弁理士お仕事ナビ」・「Patent Job Agent」
    • 現在は、実務教育などを手がける「株式会社知財塾」へと譲渡され、『知財お仕事ナビ』として運営されているようです。エージェント登録や転職サポートは今も継続されているようです。
  • 技術系専門職向けの「転職ナビ」
    • こちらは大手「マイナビ」へと譲渡されていいるようです。

かつて定番だったサービスが形を変え、今や知財業界の転職エージェントは「特化型」と「ハイクラス大手」の二極化が進んでいるようです。現在、知財業界で主流となっている主なエージェントをまとめてみました。

転職エージェント
エージェント名 特徴・強み
リーガルジョブボード 士業・知財特化型として、現在業界トップクラスの求人数。専門アドバイザーのサポートが手厚い。
知財お仕事ナビ アスタミューゼから引き継がれたサービス。転職成功で「知財塾」の講座が無料受講できるなどの特典あり。
JACリクルートメント / ビズリーチ 大手企業のインハウス(社内知財部)や、高年収のハイクラス求人を狙う場合に必須のプラットフォーム。
REX弁理士キャリア 特許事務所や企業知財部に特化。丁寧なキャリアの棚卸しやマッチングに定評。

※【2026年最新】弁理士・知財業界 おすすめの転職エージェント10選CareerView:知財業界に強い転職エージェント比較、JACリクルートメント 公式サイトNO-LIMIT:弁理士転職エージェント5社徹底比較

「昔はパテントサロンを眺めるだけだった」「以前使ったエージェントにまた相談しよう」と思っていると、現在の優良求人や、表に出てこない企業知財部のポスト(非公開求人)を見落としてしまうかもしれません。

これからの知財キャリアの考え方

こうした市場の変化やエージェントの現状を踏まえ、これから転職活動やキャリアアップを始める方は、次のような順番で考えてみてはどうでしょうか。

  1. 自分の強み(技術分野・語学力・インハウス経験など)を整理する
  2. 気になる事務所や企業の規模・得意分野を調べる
  3. 現在の主流であるエージェント(特化型や大手)を組み合わせ、自分の働き方に合う職場を見極める

事務所の規模や得意分野を調べるときは、特許出願ココの事務所別の公開件数ランキングや、弁理士数ランキングもご活用ください。事務所ごとの出願件数の推移や、所属弁理士の数を確認できます。

その他、特許庁が募集している任期付職員(任期付特許審査官)に応募するという手もあるかもしれません。簡単ではありませんが、特許庁という知財業界の中心で経験をつくむことができ、任期終了後弁理士の資格をとりやすくなります。指定の分野で高い知識を持つなど応募資格を満たせばチャレンジするのも良いかもしれません。

まとめ

知財業界の転職市場は、出願件数の減少やDX、グローバル化、そして紹介会社の変化も含めて、この10年で大きく変わってきました。

しかし、変化しているからこそ、英語力や先端分野の知識、システムへの理解など、はっきりした強みを持つ方にはむしろチャンスの多い環境になっていると感じます。「今の自分のスキルならどこで活かせるか」を、最新のアンテナを使って探してみてはいかがでしょうか。

本記事の数字は、特許出願ココで取得・集計したデータをもとにしています。気になる点などありましたら、コメントいただければ幸いです。

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