特許出願のデータは通常、特許庁が発行する「公開特許公報」の公開日単位で集計されがちですが、実際に特許事務所が出願書類を作成・確認・提出する出願日で見ると、まったく異なる景色が見えてきます。本記事では、出願日ベースで2023年1月〜2025年3月の特許出願件数を集計し、ソフトバンクグループ株式会社による2回の大規模な出願の波と、これにほぼ一手で対応した弁理士法人太陽国際特許事務所・弁理士法人酒井国際特許事務所の2事務所のピーク時ワークロードを分析します。
集計対象を2025年3月までとしているのは、特許出願から公開までには通常約1年6ヶ月のタイムラグがあり、本記事作成時点(2026年9月分まで取り込み済み)ではそれより新しい出願はまだ公開が完了しきっていない(件数が実態より少なく出てしまう)ためです。
出願日ベースで見える、2回の大規模な出願の波
全体の出願件数推移グラフを見ると、2023年9月と2024年8月の2回、突出して大きな山があります。出願人別の内訳を確認したところ、いずれもソフトバンクグループ株式会社による大量出願が主な要因でした。
2023年9月は全体24,800件のうち8,953件(全体の約36%)、2024年8月は全体21,968件のうち9,416件(全体の約43%)が同社1社による出願でした。これほどの規模の出願が、特定の月に集中していたことになります。
下の2事務所のグラフを見ると、太陽国際特許事務所・酒井国際特許事務所とも、2023年9月と2024年8月に明確な山があり、ソフトバンクグループの出願件数の山と完全に一致しています。つまり、この2回の大規模な出願はほぼ全てがこの2事務所によって対応されていたことになります。
ピーク月の1日あたりの出願作業量
出願日ベースで出願数が多かった月は2023年9月と2024年8月とで、これに対応した太陽国際特許事務所は2,792件と4,598件と、酒井国際特許事務所は7,023件と5,388件とを出願しています。
| 出願の波 | 出願ピーク月 | ソフトバンク出願数 | 太陽国際 | 酒井国際 | 参考: 公開特許公報での反映時期(目安) |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1波 | 2023年9月 | 8,953件 | 2,792件 | 7,023件 | 2025年4月頃 |
| 第2波 | 2024年8月 | 9,416件 | 4,598件 | 5,388件 | 2026年2月頃 |
さらに細かく両事務所が最も多く出願した日とその出願数を調べると、以下のような出願を両事務所は実行したことがわかります。
| 事務所 | 月 | 出願日 | 出願数 |
|---|---|---|---|
| 弁理士法人酒井国際特許事務所 | 2023年9月 |
2023/9/25 2023/9/22 2023/9/21 |
1145 1084 1065 |
| 2024年8月 |
2024/8/16 2024/8/30 2024/8/23 |
1036 1031 1017 |
|
| 弁理士法人太陽国際特許事務所 | 2023年9月 |
2023/9/27 2023/9/25 2023/9/26 |
389 384 383 |
| 2024年8月 |
2024/8/19 2024/8/23 2024/8/22 |
402 391 390 |
弁理士法人太陽国際特許事務所は、1営業日あたり400件前後の出願を行い。弁理士法人酒井国際特許事務所は、1営業日あたり1,000件以上の出願を行っています。個々の事務所が手作業で1件ずつ出願書類を作成・確認・提出するペースとしては現実的ではありません。数日ではありますが、連続して同程度の数の出願を行っていることから、事前に出願準備をしておいて、出願の提出のみを特定の1日に実施したというものではないと思います。各事務所はシステム的・バッチ的に処理できる能力を持っているのではないかと思います。
私が勤めている事務所でも、出願書類の作成、確認、提出をシステム的にできるようにしたいという思いが強くなりました。
まとめ
今回は、特定の大口出願人の動向ひとつで、対応する弁理士法人の月間実務量が数倍から十数倍に跳ね上がることがある、という点は特異な現象でした。その特異な現象に対応できる事務所が存在することもわかり、大いに励みになりました。
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