[特・実] 出願図面

Word文書の課題

ほとんどのみなさんが明細書を作成するとき、MicrosoftのWordをお使いになっていると思われます。このWordが2つの点で課題を抱えています。その課題は、①インターネット出願ソフトに読み込みができるHTMLファイルの書き出しと、②上記図面ファイルの表示方法です。

WordのHTMLファイルの書き出し

特許庁は、Wordで明細書を書くときには、HTMLに書き出して、それをインターネット出願ソフトに読み込ませることを手順書に記載しています。方法としては、[名前を付けて保存]を行い、[ファイルの種類]を[Webページ(フィルター後)(*.html; *.htm)]にするようにとインストラクションしています。更に、図面のファイルは、行内表示でなく、外部のBMPファイル(白黒2値)のものをリンクして、使うことを推奨しています。

というのも行内表示にした図面ファイルを別名保存で書き出すと、図面サイズが小さくなるという現象が生じるからです。Microsoftがなぜそのような仕様にしているのか不明ですが、貼り付けた図面をそのまま書き出さず、ファイルを小さくして書き出してしまいます。

下にその例を記載します。明細書の図面に図1.png~図5.pngを貼り付け、その明細書を別名保存でHTMLに書き出してみると、2000ドット近くあった横幅の図面が、630ドット程度の大きさになってしまいます。特許出願に関しては、MicrosoftのWordは、厳しいツールです。

ただし、これをカバーするツール等もあるので、編集として、Wordを使い、HTMLファイルに変換ツールとして、他のツールを使うことも可能です。その他、後述する方法で中の図面ファイルを取り込むことも可能です。

Wordの画像の表示

次にWordの画像表示です。Wordは、ある画像サイズまでは、解像度に合わせて表示しますが、特定のサイズを超えるとWord文書の幅いっぱいになるように自動縮小・拡大を行い表示します。Word文書を編集する方法としては、至極真っ当な方法なのですが、特許出願等の明細書となると、見えたものそのものの形で出願されることを期待してしまいます。この自動縮小・拡大が図面の大きさをばらばらにしてしまう一因です。上に書いたように、特許庁のインターネット出願との相性も問題ではありますが、Wordの画像表示自体にも多少の問題があります。

解決方法

この問題を解決する方法としては、今のところWord以外のソフトを使ってWord文書をHTMLに変換するしか方法がありません。特許庁も上記のようにWord単体での解決方法をあきらめているので、ソフトを使用するのがよいと思います。Googleで「特許出願 HTML変換」として、検索してみてください。いくつかの解法が示されると思います。

まとめ

強引にまとめると、特許出願等の図面は、すべての画像ファイルが同じ解像度になるように、そのドット数を考慮すること。Wordに貼り付けたときは、Wordの自動縮小・拡大が働かないように画像の大きさを図全体で調整すること。WordのHTML書き出しを利用せず、他のソフト等を使ってHTMLに書き出すこと。これらを守れば、安定した質の良い図面の明細書が出せると思います。

 

余談: Wordファイル(拡張子docx)の構造

あと、余談になってしまいますが、図面を正しくWord文書から取り出す方法として、拡張子docでなくdocxのWord文書に関しては、ひとつ面白い方法があります。Word文書は、ご存知の方もいると思いますが、XMLで記載されており、添付イメージ等を含め、zipで圧縮されたファイル形式です。したがってdocxという拡張子をzipの拡張子に強制的に変更すると、Word文書のXMLやイメージを閲覧することができます。図面5枚を貼りこんだ明細書のWord文書をzipの拡張子に変更して展開したものを以下に示します。[word]フォルダの[media]の下に5枚の図面があることがわかります。

実際にファイルに展開(解凍)し、その画像の大きさを見てみると、Wordに貼り付けたままの大きさのファイルが保存されています。これをマクロ等を使って取り出すことは可能です。他のソフトを使わず、この実際のファイルを取り出し、HTMLにリンクすれば、出願用のHTMLファイルと図面ファイルとを取り出し可能だと思います。腕に自身のある方は、マクロを作ってみてはいかがでしょうか。

以上、余談が過ぎましたが、特許出願等の図面について、どのような大きさを選べばよいかの一考です。参考になれば幸いです。

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