角マウス購入②~重い球の白リングMade In USA~
Apple Desktop Bus Mouse (以後、角マウス)
前回は、偶然手に入れた黒リングの角マウスについて書きました。あの黒リングの個体は、調べれば調べるほど面白く、Made in USA の初期型であることが分かりました。当時のAppleは、マウスを「消耗品」ではなく精密機械の一部として扱っており、内部のローラーやボールの質感からも、こだわりが強く感じられるものでした。

今回ご紹介するのは、その黒リングの後に登場した「白リング」モデルです。一見すると、後の大量生産品と同じように見えるかもしれませんが、中身は別物です。この個体もまた、貴重な「Made In USA」であり、内部にはズッシリと重いグレーのボールと、今や失われた技術である「金属製ローラー」を搭載しています。
この「角マウス」の歴史を紐解くと、技術的な背景にはスティーブ・ウォズニアックの存在があります。彼が提唱した「Apple Desktop Bus(ADB)」という規格は、キーボードやマウスを数珠つなぎにできる画期的なものでした。また、デザイン面ではハルトムート・エスリンガー率いる「frog design」が担当し、スノーホワイト(白雪姫)デザイン言語に基づいた、直線的で美しいフォルムが完成しました(参照)。
当初、これらの最高級のパーツを用いた製造はアメリカ国内で行われていましたが、Macintosh SEやIIの普及に伴い、製造拠点は徐々にコストの低い台湾やマレーシアへと移っていきました。今回入手した「USA製」の白リングは、そのクオリティが維持されていた過渡期の、非常に贅沢な作りの一台と言えます。
角マウスの構成
入手した白リング個体の詳細なスペックを以下の表にまとめました。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| マウスのモデル | A9M0331 |
| 製造番号 (S/N) | 695516 |
| 製造国 | Made In USA |
| リングの色 | 白蓋 (白リング) |
| ボールの種類 | 重い灰色のボール |
| ローラー素材 | 金属 (ステンレス製) |
| スイッチセンサー | オレンジ |
| スイッチメーカー | OMRON JAPAN |
| 基盤の製造番号 | 830-0146 |
この「695516」という個体の最大の特徴は、その「中身の濃さ」にあります。外見こそ標準的な白リングですが、内部のスイッチには信頼のOMRON JAPAN製、それも「オレンジ(金合金接点)」が採用されています。金属ローラーとこのオレンジスイッチの組み合わせは、クリックした際の「カチッ」という音の響きや、操作時の慣性において、後のプラスチック製ローラー機とは比較にならないほどの重厚感をもたらしてくれます。





歴史的な価値
角マウスには、最初期の「黒リング」、今回の「白リング」、そして後の「台湾・マレーシア・中国製」といった数多くのバリエーションが存在します。
その中でこの「白リングのUSA製」は、非常に興味深い立ち位置にあります。最初期の黒リングが「歴史的なプロトタイプに近い存在」だとすれば、この白リングUSA製は「実用入力デバイスとしての完成形」と言えるでしょう。
製造拠点がアジアに移る直前、あるいは過渡期に作られたこの個体は、見た目の清潔感(白リング)と、初期USA製特有の豪華な内部パーツ(金属ローラー、オムロンオレンジスイッチ)を両立しています。外見だけで判断すると見逃されがちですが、金属ローラーの滑らかな操作感を味わえる「隠れた希少個体」だと思います。
まとめ
今回は、白リングでありながら中身は最初期のクオリティを維持した、Made In USAの角マウスをご紹介しました。黒リングの歴史的重みも素晴らしいですが、この白リング個体が持つ「実用的な最高スペック」もまた、SE/30などの当時の名機と組み合わせるには最高の選択肢となります。
角マウスの世界は、シリアル番号一つで内部の仕様がガラリと変わる、非常に奥深い世界です。今後もオークション等で情報を収集し、個体ごとの差異や歴史的な背景をさらに深掘りしていきたいと思います。
